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(2008年11月30日)

「エチオピアとの出会い」


私がはじめてアフリカに渡ったのは1988年のことです。それから5年間、タンザニア南部の高地、ムベヤで農業プロジェクトに関りました。そこでは女性たちが牛を入手して畑を耕したり除草したりすることを手助けししながら、旅行者としてザンビア、ジンバブエ、ケニアを訪れました。

1994年にエチオピアに移り、カナダのNGOで開発協力の仕事を続けました。その間に、バングラデシュやタイを訪れる機会もありました。これらの国々の人々と仕事をしてゆくのはとても楽しい経験で、同時に、アフリカという環境が私にとってとても心地よいものだということに気が付きました。

エチオピアへ移ったことが私の人生の転機でした。エチオピアの文化や歴史の豊かさは、昔も今も変わらずこの国の魅力であり、先祖伝来の遺産と豊かな伝統が独特の風情を醸し出しています。しかし、私はこの国の人々が、めまぐるしく変化する厳しい環境に耐え、何世紀にも渡る不当な支配者たちの下の、いつ終わるとも知れないつらい貧困を生き抜き、跳ね返すほどのすごい力の持ち主であることに気づき、エチオピアの虜になりました。そして、その気持ちは1996年と1998年に、かわいらしいエチオピアの娘たちを養女にした時、『エチオピアとともに生きてゆこう』という信念へと変わりました。

「新しいアイデア」

エチオピアで開発の仕事に関わって7年が経ち、私はそれまでとは違う方法でこの国を変えたいと思うようになっていました。事業を始めるというアイディアは面白そうであり、そんな私をエチオピアの友人たちは勇気付けてくれました。友人たちも「弱く貧しい人々にとって、持続可能な雇用を創り出すことが、未来の貧困削減に重要である」と感じている人たちでした。

中でもある年上の友人は、「尊厳と機会のある仕事、人々がその才能を発揮でき、彼らの誠実さや働きに見合った収入を得られる、そんな仕事がある会社を創る」ことを勧めてくれました。エチオピアで、人々がどれ程懸命に働いてきたか。そして人々が、家族を養うだけの収入さえ得られればと願っていることを知っている私にとって、この勧めは強く響くものでした。



「テキスタイル会社『サバハール』の設立」

サバハール(Sabahar)を設立するための問題の1つは、シルク産業がエチオピアでは全く新しい事業であったことでした。そのため、事業を始めるにあたって、とても初歩的な所から手をつけなければなりませんでした。例えば、幼虫を世話するという考え方の導入やシルク生産に必要な機材の開発、農業省とのトレーニングプログラムの開発などです。

通常新しい農業産品を農村に浸透させるには何年もかかってしまうものですが、私たちはこのプロセスをできるだけ早く進めるよう努め、たくさんの訓練を実施し、生産者に自信をつけさせました。私たちはまだエチオピア国内で十分な量のシルクをつくるまでには至っていませんが、その量は着実に増え、先行きは明るいと思っています。

「サバハールの二つ宝物」

サバハールが私に授けてくれた大切なものが2つあります。

その1つは、一緒に働いている人達です。私の仕事場には、懸命に働く献身的なスタッフがいます。糸を紡ぐ女性達やそれを織る男性達、織物を染色し仕上げる女性達やマネージメントチームなど。スタッフは皆サバハールの理念を信じ、熱心に命働いています。そして、繭(まゆ)の生産者や「アフリカ理解プロジェクト」などの関係者も私たちの事業を成功に向け、勇気付けてくれています。

もうひとつは、地域や国際市場からの反応です。サバハールが人々の生活に変化をもたらそうとしていること、伝統的なエチオピアの織物技術が非常に美しいものであることを、人々が認めてくださっているという手ごたえを感じています。私たちにとってこれからの挑戦は、品質を高め、同時に創造的デザインの製品を創ること。懸命に働くことで、私たちは成長を続け、さらに市場を広げていくことができると信じています。



「日本のみなさまへ」

日本には古い伝統があり、みなさんはシルクの価値をよくご存知だと思います。エチオピアで作られているシルクはエリシルク(野蚕*)といい、日本古来の桑の葉を食べる蚕が作るマルベリーシルク(家蚕)とは異なる種類のものです。マルベリーシルクと同様に、エリシルクには、天然の美しさがあり、また、これまで述べてきたような社会への貢献と相まって、より深い魅力を持っていると言ってもよいかもしれません。私たちは、日本のみなさんにまずこのエチオピアの新しいシルクを見ていただきたいと思っています。そして、サバハールへの支援を含む、アフリカ理解プロジェクトの価値のある理念を支援していただきたいと思っています。

 繭を使ったエコフラワー

サバハール(Sabahar)とは

サバハール(Sabahar)は、「シバの女王のシルク」という意味で、その製品には、日本の絹織物に比べて、より温かみを持っているのが特徴です。宝物であるサバハールに関わる人々の最新エピソードは、こちら(http://sabahar.com/)でご覧いただけます。



(*) エリシルク(野蚕)はの生糸には光沢があり、通気と強度に優れるという特徴があります。


文:キャシー=マーシャル、インタビュアー:白鳥くるみ・星野貴子、翻訳:富田美菜都(サポーター)

 プロフィール:キャシー・マーシャル(Kathy Marshall)


社会企業家、サバハール社代表。エチオピア産蚕を使った手作り絹製品の製造販売を手がける。タンザニアとエチオピアで農村開発や女性支援分野の仕事に長らく従事。1994年よりエチオピア在住。
サバハール社(http://sabahar.com/

* アフリカ理解プロジェクトは、サバハールへの助言と、その製品の日本への紹介を行っています。

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