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「カンガ」って、何だろう?

KANGA(カンガ)とは、東アフリカのタンザニアやケニアなどの国々の女性たちに愛されている民族布のこと。19世紀中頃に、タンザニアのザンジバル島やケニアの東海岸の港町モンバサのおしゃれな女性たちが、考えついたのが始まりだと言われています。
素材はコットン100%で、サイズは約160×110センチ。この一枚布-カンガを、日本にいち早く紹介した織本知英子さんに、カンガとそれを育んだアフリカの魅力、そしてご自身についてお聞きしました。

アフリカとの出会い

1991年の初めてのアフリカ旅行は、サファリしながらキャンプを張ったり、モンバサからマリンディまでレンタカーで移動したりという、妙齢の女性2人には中々骨のある旅。そんな旅の途中で出会ったのがカンガでした。「それまでも南の国々は大好きで、それぞれの土地の布も好きでしたが、なぜか『カンガ』そして『アフリカ」』には、‘はまって’しまいました。再び訪れないではいられないアフリカの魅力が何なのか、ひと言で表すのは難しいのですが、あえて言うなら゛空気が合った゛ということでしょうか。」

Kila nikikukumbuka moyoni hufurahika(あなたを心に思うたび、私は喜びでいっぱいになるの)「カンガ・コレクション」 p. 17より



生活に息づくカンガ

東アフリカの女性たちにとって、カンガは生活の中に゛なくてはならない゛もの。赤ちゃんが生まれた時には、まっさらのカンガでおくるみをし、女性が亡くなった時には、その亡骸をカンガでくるみます。今も“揺りかごから墓場まで”カンガは女性の一生を彩っているのです。
例えば、外出するときに普通の服の上から二枚ひと組で、赤ちゃんを背負うのには一枚でOK.。民族舞踊を踊る時には、必須アイテムとしてカンガが使われています。

『カンガ・マジック101』との出会い

東アフリカの女性たちは、カンガを自由自在に着こなしています。1991年当時のケニアで織本さんより先にその魅力にはまってしまった女性がいました。そしてその女性は、数冊の本を出版していました。その1つが『カンガ・マジック101』の原著『KANGAS101USES』。これは、カンガのさまざまな使い方をユーモアあふれるイラストで描いた一冊。筆者はジャネット・ハンビーさんという動物学者でした。
「どうやって筆者に連絡したらよいかわからない、それでも、どうしてもこの本を日本に紹介したい、という衝動が抑えきれなくて出版社に手紙を書きました。この本を是非日本に紹介したい、と。返事を待つこと2ヶ月。あきらめかけていた頃に、返事がきました。」(その後の詳細は、『カンガに魅せられて』をご覧ください。)

Moyo Kwa moyo (誠意のある人には誠意をもって)「カンガ・コレクション」 p. 5より



支えてくださった人・人・人

紆余曲折を経て何とか『カンガ・マジック101』は出版に漕ぎ着けました。「出版にあたって、カンガにプリントされているスワヒリ語を訳していただいた守野庸雄先生には、その後も大変お世話になりました。折にふれてお電話をいただいたりして、大変励みになりました。」
1995年に最初にカンガを店頭においてくれたのは東京・御茶ノ水のエコロジーショップ。ここでお話会の依頼を受けたことが、カンガの奥深さを自ら知るきっかけにもなったそうです。また、通信販売会社は、カンガが日本全国に広がる糸口を作ってくれただけでなく、アフリカの物品を日本で販売することの厳しさも教えてくれたとか。
ここ数年は、4月から6月ごろにかけて、ギャラリーを借りての展覧会や、ギャラリーカフェなどでの展示会・ワークショップなどを行うのが恒例となっています。
「これまで本当にたくさんの方々の支えを頂いています。みなさんカンガの魅力をよく理解してくださり、とてもうれしいです。また、年々、アフリカに関心を寄せる方が増えているのを実感しています。」

ライフワークバランス-達人への道

毎年1月には2〜3週間、取材・調査とその年のカンガを買い付けるために、ケニア、タンザニアを訪れています。現地のカンガショップには無数のカンガが並び、いくら廻っても見尽くすということはありません。「もうこれで全部見た、と思っても、次の日には見たことがないカンガが並んでいたりしますから。毎回日本に帰る時には、後ろ髪を引かれる思いです」
゛次回できる限り早くアフリカに戻りたい゛との思いで、生業のライターの仕事もやりつつ、カンガPR活動に勤しむ日々が続きます。

Jamani mambo si bure (みなさん、どんなこともムダではありませんよ)「カンガ・コレクション」 p. 19より



好きなことに没頭していたら、いつの間にか゛カンガの専門家゛と呼ばれるようになっていたという織本さん。「何をしたらよいかわからなくなってしまった時、とりあえず目の前にある好きなことを突き詰めてみると、何か道が開けるかもしれませんね」。今の夢はカンガ美術館を設立すること。そしてもっと多くの人にカンガの魅力を知って欲しい、カンガがアフリカに興味と関心を寄せるひとつの機会になってくれれば、と思っています。

 さりげなく主張する布(KANGA SAYING)


カンガの魅力は、素材、図柄などのデザイン、そして中央にプリントされた「ことば=カンガセイイング」などいろいろ。中でも、カンガセイイングには、昔からのスワヒリのことわざや、人生の教訓、愛のメッセージなどさまざまなものがあり、女性たちは、自分の気持ちや考えにマッチしたことばがプリントされたカンガを着たりすることで、さりげなく自己主張しています。カンガを腰に巻くと、ちょうどカンガセイイングの部分が足首の後ろに来て、他人は後ろからその文字を読むことができるというわけです。(カンガのデザインとカンガセイイングの詳細は、カンガの写真集『カンガ・コレクション』をご覧ください。)

織本さんには、アフリカ理解プロジェクトの本「アフリカンドレス」にも、寄稿いただいています。

(情報提供:織本知英子、インタビュアー:星野貴子・アフリカ理解プロジェクト)

 プロフィール:織本知英子(Chieko Orimoto)

カンガ研究家、ポレポレオフィス代表。
東アフリカの一枚布、カンガの魅力にいち早く気づき、展覧会、展示会、お話会などを通じて、カンガ文化を日本に紹介する活動を続ける。著書に『カンガ・マジック101』(訳・編)、『カンガに魅せられて』、カンガの写真集『カンガ・コレクション』など。


  

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