【叡智プロジェクトの背景】
アフリカの叡智プロジェクトは、2005年3月25日から9月25日までの6ヶ月間おこなわれた、愛・地球博の市民プロジェクトとして生まれた国際プロジェクトの一つです。これは、今を生きる若者(10代〜20代)が中心となり、様々な国際問題についてメッセージを発信しようというもので、“環境”“ストリートチルドレン”“10代の平和活動”そして“アフリカ”という4つのテーマから構成されます。
現代の国際問題の縮図であるというアフリカを、若者の目でとらえなおし、自分たちができる取り組みから始めていこうとして、このアフリカの叡智プロジェクトは生まれました。
将来を担う子どもたちが、アフリカの存在に気づき、アフリカの魅力を感じることができるようにするために、在日のアフリカの人々と日本の若者が一緒になって全国を回る・・・そして、子どもたちがアフリカ現地の子どもたちと交流することを。
【叡智プロジェクトの活動のねらい】
・アフリカ各国の文化を「体験」することで、子どもたちがアフリカに興味・関心を持つようになること。
・アフリカのポジティブな面を知ることで、より一層アフリカを身近に感じられるようにすること。
具体的には、地域ごとの智恵や思いがいっぱいつまった“民話”の朗読や、在日のアフリカ諸国の方々によるジャンベをはじめとした音楽の演奏を組み合わせたワークショップをおこないました。
【プロジェクト内容・流れ】
<3月>
アフリカの叡智プロジェクト発動!
愛・地球博 瀬戸会場にて、民話朗読、セッツァ・ドラミニさん講演、ワンガリ・マータイさんとの鼎談
<4〜5月>
- プロジェクトに参加する日本の学校を決定し、各学校にパートナー校としてアフリカの学校を設定。今回は、5カ国(南アフリカ・ガーナ・セネガル・ルワンダ・ウガンダ)に絞った。
- 日本の学校では、朗読団の巡業前に各学校でパートナー校となる学校の国について事前学習を進めておく。例) さくら小学校−ルワンダ小学校⇒さくら小学校はルワンダについて学習。
<6〜7月>
@在日のアフリカの人々と日本人の若者が一緒に“民話朗読団”を結成、全国の小中学校を巡業してまわる ⇒民話の朗読や、ジャンベ等を用いた音楽のワークショップをおこなう
<8月>
A子どもたち自身がアフリカの民話を読み、その紙芝居を作る
- 各学校のパートナー国の民話の紙芝居を作成。例)上記:さくら小学校 ⇒ ルワンダの民話を読み、その紙芝居を作成
<9月>
B民話朗読団が巡業をした学校の代表生徒を、愛・地球博:瀬戸会場に集め、自分たちの学んだアフリカ、自分たちの感じるアフリカ、についての意見を交換する『アフリカの叡智サミット』を開催
<10〜11月>
C子どもたちが作成した紙芝居やメッセージを現地の小学校へ送る
<12月〜>
D現地の小学生たちがメッセージを作成、日本に送る
【アフリカの叡智サミット参加者の感想】
8月におこなわれたアフリカの叡智サミットでは、子どもたちが自分たちの勉強したアフリカ諸国についてその成果を発表しました。また、スタッフや他の小中学校の生徒さんと一緒に、アフリカの“紛争”“環境”“貧困”ついて語り合い、3つの提言を発表しました。
サミットは一泊の合宿形式でおこなわれたため、保護者の方々も同席され、ともにアフリカについて考えました。会場ではたくさんの方がつめかけ、アフリカの民話(ガーナ)の朗読や子どもたちのアフリカへの想いに耳を傾けていました。
以下、参加した生徒・保護者の感想です。
サミットで発表するまでの過程の中で、今まで興味も持たなかった、TVだけの情報でしかなかったアフリカがいろんなことを教えてくれました。やはりアフリカは、人類発祥の地で人間の原点なのだと思いました。おそらく私は、このプロジェクトに参加していなかったら、少年兵の問題、今のアフリカの状況についてここまで詳しく知ることがなかったと思います。私はウガンダの子供達を知ることにより、今まで以上に将来について今の自分について、日本について考えることができました。そして、サミットでは、アフリカの音楽に触れたり、各地の人といろんな話ができ、私にとってプラスの面ばかりでした。<中3・女子、パートナー国:ウガンダ>
今、日本の親達の一番の関心は、“自分の子供の成績”。私もそんな親の一人でした。良い成績、良い学校へ…それが子供の将来を幸せにすると思っていました。
世界には、今日の食べるものも無く、寝るところも無い子供達が大勢いる、武器を手に戦っている子がいると報道の中だけのことでした。私に出来ることはないと思っていました。
プロジェクトリーダーのお話を聞いて、自分の視野の狭さ、自己中心的な生活に気づきました。
関心を持つこと、興味を持つことから始まる!とサミットで子供達が自分達の考えを自分達の言葉で一生懸命語っていた姿に感動しました。
“親が変われば、子も変わる”自分で考え、行動する勇気を教えてくれた、心の大きなサミットでした。<小4・女子の父親、パートナー国:ガーナ>
【メンバーの声】
「アフリカへの思い」が自分をはじめ、メンバー全員がサミット終了まで動かし続けてきた原動力なのだと感じています。私達が半年程で成したことはほんの小さなことであり、スタートに過ぎないことです。しかし同時に私達が得ることができた成果は、未来への大きな可能性と考えています。
巡業した学校の生徒達がどこかに私達と同じような思いを抱きながら、世界を視野に大きく羽ばたいていく姿が見えてやみません。 <大学生、男子>
【叡智プロジェクトの成果と課題】
各学校を巡業して感じたのは、学校教育の中で、「アフリカ」というのはテーマにあげられにくいということです。どの教科も授業時間が足りない中で、アフリカについて学ぶ余裕はないようです。
しかし、その結果、中学生でも
「アフリカって何語?」
「アフリカってどこにあるの?」
「え!アフリカって一つの国じゃないの??」
・・・と、アフリカに関しては乏しい知識であるという現実がありました。
しかし、少しでも共感できることや、楽しい!と思えることがあると、子どもたちは目を輝かせて取り組み、興味を持ち始めます。このアフリカの叡智プロジェクトは、かなりの影響を残しています。宮崎の中学校(パートナー国:ウガンダ)では、年間カリキュラムにアフリカをテーマに設定した総合学習の時間を持っています。この学校は非常に熱心で、生徒たちが自主的にウガンダへのビデオメッセージを創作したり、文化祭でウガンダの少年兵の問題をテーマにした劇を創りあげたりしました。
京都の小学校(パートナー国:ウガンダ)では、児童会がアフリカ支援のための募金活動を始めました。
栃木の小学校(パートナー国:ガーナ)では、2回目の巡業を受け入れ、子どもたちはアフリカについての勉強を続けています。この学校は、先生方がとても真剣に取り組んでおり、全校あげての参加となっています。
このように、アフリカの叡智プロジェクトでは、子どもたちに見せたり聞かせたり一緒に演奏したり、という“体験”を重視してアフリカの文化を伝えてきました。その成果は、民話朗読団が去った後も自主的な活動として残っているところに、みられると思います。
現在、プロジェクトは現地の子どもたちと日本の小中学生との交流を持たせるという段階にきています。学校教育の中にアフリカをテーマとして取り上げられるようになること、そして、子どもたちがアフリカの国々を身近なパートナーをして感じられるようになること・・・
これらを目指して、このプロジェクトはまだまだ進んでいきます。
URL
http://www.africaswisdom.jp
山崎瑛莉
立教大学法学部政治学科4年
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