観光産業のジレンマ
目的: 「観光産業」によって起こる途上国のジレンマ。現地の人々の生活への影響に問題の焦点を当て調査する。
準備:授業で使うパンフレットと写真を用意する。旅行代理店などで入手する。パンフレットや写真は、観光が重要な産業となっている途上国の中から選ぶ。例えば、チュニジア、カリブ、エジプト、タンザニア、タイ、スリランカ、インドなど。パンフレットには、地理的な場所、ホテルや現地の観光地、旅行費用(旅費および旅行代理店の手数料を含む)などの情報が盛り込まれていることが必要。また、途上国の人々の普段の生活がわかるような情報も必要である。観光産業が人々の生活にどのように影響しているのかを、現地の人たちから聞いたものを用意できるとなお良い。
手順:
1. |
子供たちに2人1組になってもらい、休暇で訪れたい場所を選ぶときの「選択基準」をリストアップさせる。その場所は、世界中どこでもよく日本に限らないことを強調しておく。子供たちは話し合いながら、自分たちでつくった基準にランクを付ける。 |
2. |
子供たちに、用意した(途上国の観光産業のことがよく説明されている)写真や観光パンフレットを検討するよう指示する。「観光客が魅力を感じるような観光地にするには、どのような要素が必要か」を話し合うために これらのパンフレットや情報から、海水浴場、ホテル、便利な交通手段といった魅力的な要素を探してリストアップする。 |
3. |
子供たちに図1の意見を読むよう指示する。これは観光産業の影響に最初に気づいた人たちの意見である。子供たちに観光産業の利点と不利な点の両方をリストアップさせ、さらに小さなグループで観光産業は、有害か無害かについて意見をまとめさせる。 |
4. |
勉強した国の観光産業について2つの文章を書いてもらう。タイトルは1つが「利点」もう1つは「不利な点」。 |
展開:
「○○国の観光産業の賛否」というテーマで、ディベートをアレンジすることもできる。
下に出てくる人たちの中から5人を選び、それぞれの人物を子供たちにロールプレイもらい、討論をする。
高学年の生徒は、以下の例を見せることで、途上国の観光産業に関連する道徳上のジレンマに気づくだろう。
ナイジェルは、来春の休暇の予定について書かれている手紙を学校から持ち帰っていた。
4人の先生がチュニジア行きの学校主催パッケージツアーを計画しており、そのツアーに興味をも持ってくれそうな 生徒を探していた。ナイジェルはアフリカを知ることのできるこの機会をとても楽しみにしていた。
しかし、彼はこのような国での観光産業の影響を勉強したばかりだった。 彼は(彼が途上国に与える)損傷は、(彼が得る)利益に勝ると感じた。「ナイジェルがどうすればよいか」をペアかグループで話し合わせる。
もちろん、観光産業は最貧困国だけの問題ではなく、観光が産業化されている国すべてに起こりうる問題である。もっと一般的な問題として、観光産業が訪問先の国の文化を損なうかどうかといったことを考えさせるのもよい。
「観光産業に対する現地の人々の声」
「観光産業に対する意見」
楽天的意見
・持ちこまれる外貨を考えてみろよ。
・多くの仕事ができる。
・観光客から学ぶことがたくさんある。
・ディスコやバーができるのはいいぞ。
・ほかの産業も運んできてくれる。
・北部にある島の貧困地域が、発展するための資本を持ちこんでくれる。
・政府が新しい産業を始めることができるし、新しい家を建てられる。
悲観的意見
・外資ホテルの経営者は全ての利益を持っていってしまう。政府はローン返済をしなければならないから、俺たちは新しい家なんて建てることはできないよ。
・私が思うには、彼らはいやな仕事しか私たちにはくれない。例えば給仕、掃除夫なんか。こんな仕事は給料も多くないし。これは私たちの住むジャマイカでも起こっている。知っているでしょう?
・でも観光客は観光シーズンだけしかやってこないよ。そのほかの期間の私たちの仕事はどうなるの?流行が変わって、観光客が他に行ってしまったらどうするの?
・う〜ん、私の家族は移住したくないって。アメリカ人は、ただビーチに ホテルを建てたいだけだから。
・ところで、そのお金は誰が手にするんだ。そう、店やカフェだよね。彼らは、もうすでに裕福じゃないか。
出典World Studies 8-13: Simon Fisher and David Hicks
[Too Much or Too Little]より
翻訳:舩倉江梨子(監修:白鳥くるみ)
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