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セネガル:貧困?とんでもない僕はマンゴーで成功するよ!ジムバブエ: ハヤシエリカ「民族楽器ムビラを伝える」

プロフィール
横浜市在住。看護師として勤務後、2001年から2003年までアジア横断、アフリカ縦断の旅にでる。旅の途中、出会った人々や風景を絵と詩に描き留め始め、ジンバブエでショナ族の民族楽器ムビラに出会う。帰国以後、アフリカ文化とムビラを広めるため、絵と詩の創作活動とともに、ムビラの演奏、教室、販売をジンバブエで出会った仲間ムビラ・ジャカナカとともに行っている。新風舎えほんコンテストで優秀賞を受賞し絵本「神とつながる音−アフリカ・ジンバブエのムビラ−」を2006年7月出版した。
HP: http://www.hayashi-erika.com/

ムビラとの出会い
レッスンの様子
アフリカ大陸の東側を縦断する旅の途中で、私は初めてジンバブエを訪れた。

首都ハラレの安宿で、20センチぐらいの小さな板に鉄の鍵盤をつけ、両手の親指と右手の人差し指で弾く楽器を、数人の日本人が長期滞在をして習っていた。オルゴールのような澄んだ音、小さな楽器、旅の携帯に良いし、宿にはジンバブエ人のムビラを売る人も教える人も出入りしていたので、私もひとつ購入して習うことにした。

宿のそばにライブハウスあり、ジンバブエのトップミュージシャンが定期的にライブをしていた。複数のムビラが作り出す複雑なメロディーと、ホーショウといわれるマラカスの激しいリズム、深く渋い歌声、それは躍動するダンスミュージックで観客は自由に踊り、手拍子し共に歌い、ホロロローといった掛け声をあげる。アフリカの音楽は、延々と続くリズムに、観客と出演者の枠を超えて包み込んでひとつの世界を作っていく一体感がある。アフリカでのこの開放感、一体感に日本の音楽では味わえなかった新しい感覚を私は感じていた。

こうしてハラレで長期滞在し修行仲間やジンバブエ人とムビラを弾いて過ごす日々に、ひとつの楽器を通じて人が結びつきともに生きていく暖かい思いを持つことが出きた。この旅が終わってもこんな感覚を持っていたいと思いながら、怪我をしたために私の旅はジンバブエで終わり、日本に帰国した。

 2006年の1月から4月まで、私は再びジンバブエに滞在した。今度は、ムビラやショナ文化をもっと深く知ることだけが目的だった。ムビラの先生は、前回と同じルケン・パシパミレ。多いときは毎日のように、アパルトヘイトの名残である黒人専用居住区(タウンシップ)の先生の家に通った。ムビラは伝承音楽である。楽譜はなく、一対一で先生の弾くものを真似て覚えていく。先生は、ムビラを弾きながら、感情をこめて歌う。その先生の音、歌の中で、自分のムビラの音が変わっていくことに気がついた。ムビラの伝承音楽というものは、弾き方や指使いを教えるだけのものではないのだ。先生の持つ魂を自分の魂に移していく、形なき精神を伝えるものでもあるのだという事を感じた日々だった。

ショナ族の精神を支える音

ショナ族は日本人にも似た祖先崇拝の伝統を持っている。すべての出来事は祖先の魂が精霊となって起こしていると考え、祖先の霊からメッセージをもらうためにムビラの儀式を行う。

私が参加した儀式のひとつは、ハラレ郊外の民家で行われた。ジンバブエ人は外国人が参加することを拒まず、友人たちも誘ってくれる。ムビラは神から与えられ、この世界に住むすべての人々のものと言ってくれる。すべてのものと共存していこうとする精神に、彼らのもつ文化の大きさを感じてしまう。

儀式は、2台のムビラ、2台のホーショウ、ダンサーが音楽を作り出していた。ムビラが奏でられ、人々は一晩中、踊り、歌う。ムビラの音によって、祖先の霊は霊媒師に降りてくる。中にはトランス状態となり霊が降りて痙攣する一般の参加者もでる。夜が更けた頃、ムビラの音は止み、暗闇に厳粛な雰囲気が漂う。私が会った霊媒師はヒョウの毛皮を羽織った老人だった。老人は体を震わせ恍惚とした表情になり、祖先の魂を自分に降ろして集まった人々に語りかけた。参加者はそのメッセージに真剣に質問などしていた。その儀式で、霊媒師の老人は私にハリネズミの小さな固い毛をくれた。「これはあなたを守るだろう」といってくれたので今でもそれを大切にしている。

霊媒師

 ハラレに住む人々は、定期的にクムーシャと呼ばれる生まれ故郷に帰る。大草原の中、丸い土壁に三角のかやぶき屋根をのせたショナ族の伝統的な小さな家がポツンポツンとある。牛の放牧に畑を耕し、井戸水を使い、森から薪を拾って家の中央にある囲炉裏で料理し、家族みんなで食事をする。友人のムビラ職人が言った。「ハラレの生活はお金がないと貧しいよ。でも、クムーシャはすべてが与えられているんだよ。祖先からもらった地にいれば、私たちは豊かだ」一族が絶えることなく恵みを受けてきた土地を引き継ぎ、祖先の魂に守られ、彼らはムビラの音の中に自分たちのアイデンティティーを持つことができるのだろう。ムビラの音が彼らの精神を支え、絆を支えてくれるのだろう。

儀式の様子村の様子

日本でのムビラの広がり

旅を終えた私は、日本でアフリカを中心とした絵と詩の創作とともに、ムビラの普及活動を始めた。アフリカやムビラの持つ文化は、人間らしく幸せに生きるヒントを持っているように思えた。

しかし、日本とアフリカの精神的距離は大きかった。分かりやすくショナの文化を伝えるため、ムビラの儀式の一晩の様子を絵と物語にして「神とつながる音」を作り、ムビラの演奏と織り交ぜて紙芝居として上演し始めた。紙芝居のもつメッセージに多くの人が共感してくれて、その声に励まされてコンテストに受賞し、絵本は出版された。

2006年から東京、横浜でジャカナカ・ムビラサークルという教室を開いている。仲間は着実に増え、老人ホームなどでの発表会も行った。今後も、仲間と日本の中でこの音を届けられる場を増やしていきたいと思っている。

絵本 ジンバブエは、年間1,000%以上のインフレが続き、年々経済状況も政治も悪くなっている。友人たちが、生活苦を報告してくる度に心が痛くなる。負の面ばかりが目立つが、尊敬すべき文化をもった人々であり、今共に生きている人類であることを、日本の多くの人に感じてもらいたいと思っている。

ハヤシエリカ

HP: http://www.hayashi-erika.com/

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