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北海道教育大学 大津和子教授

12月22日からエチオピアにでかけ、29日夜遅くに無事帰国しました。今回はゼミの2年生が5名、現職教員が3名、計9名のスタディツアーで、「エチオピアの子どもたちを題材とした教材」を、参加者各人が作成するためのフィールドワークを行うことが大きな目的です。

2400mの高地にある首都アジスアベバから、車で4時間ほどアフリカ大地溝帯を高度1000mまでどんどん下っていくと、あたりは一面の草原。今は乾期なので地面が乾燥していて緑が少なく、川に水がなく、ときおり吹く強風で竜巻も。日中の陽射しが強くて、気温も30度くらい。木陰に入ると意外と涼しいけれど。

懐中電灯を持って(ちょっと離れた)トイレに行く途中、夜空を見上げると、満点の星空。これまで見たことのないような大きな星たちと、無数の星で白く帯状になっている天の川。何度見ても、感嘆!!

ファンターレ州で牧畜を営むカラユ民族の子どもたちのために、はじめて小学校を建設した現地のNGOであるGTFの宿舎に泊めていただき、この小学校を訪問して、授業観察や子どもたちとの交流活動(お絵描き、サッカー、バレーボール、ダンスを習って一緒に踊る、など)子どもたちへのインタビューなどを行い、牧畜民の家庭も訪問させていただきました。

ここを訪問したのは今年で3回目。GTFのスタッフをはじめ、地元の方々にも大変歓迎していただきました。アフリカをはじめて訪問した参加者たちは、自然環境も生活様式も大きく異なる牧畜地域の子どもたちとの交流を通じて、アフリカに魅せられ、教材づくりへの意欲をかきたてられたようです。

GTFを支援している日本のNGOである「アフリカ理解プロジェクト」の代表白鳥くるみさん(エチオピア在住)が4日間アテンドしてくださり、とても充実したプログラムになりました。長くアフリカでお仕事をされている白鳥清志さん(JICA農業専門家)くるみさんご夫妻との出会いも、参加者に大きな感銘を与えてくれました。

下痢をした学生が2名(一日で快復)。熱を出した学生が2名、内1名はかなり重症で薬を飲み続けて、最終日は夕方まで宿舎で寝てから、空港へ。ダニに身体のあちこちを噛まれたのが3人(私もその一人)。ハードなスケジュールのなかで毎日いろいろな事件?が起こったけれど、それらはすべて笑いをうみ、学生たちは日ごとにたくましくなりました。

事前の計画、準備、現地との諸連絡、チケットや宿の手配、学生のプレゼミ、現地での指導……と続いた大きな仕事をひとつ終えて、ほっとした気分です。あとは、参加者の教材作成をサポートすること、そして、誰もマラリア(潜伏期間が1週間以上)にかかっていないことを願うのみです。学生たちは、毎日の記録を基に報告書を作成し、1月末にエチオピア写真展を開催する予定です。









●北海道教育大学総合学習開発専攻2年 大津ゼミ 工藤 玲加さん

私は、今回のスタディツアーで、エチオピアを、カラユ族を、ぐっと身近に感じることが出来ました。いくら国際理解教育を学んでいるとはいえ、自分の目で直接見たことも無い人たちの親身になって物事を考えるということはできていませんでした。教科書の写真に民族衣装を着て写っていても、それは「教科書の写真に写っているアフリカの人」でしかなく、実際に言葉を交わして、笑い合って、意志を疎通しようとした「友人」ではないのと同じようにです。ですが、実際にアムハラの小学校・中学校を訪れ、しかも寝食まで一緒にさせて頂いて、ホームステイのように時を過ごす中で、彼らがどんなものを見て、話して、生きているのかということに触れることが出来たように思います。もちろん、大津先生が仰ったように、一度だけの訪問ですべてを理解したような気になっているわけではありません。もっと何度も、そして長期間訪れて初めて、理解が深まってゆくのだと思います。

●同ゼミ 谷本知穂さん

振り返ってみると、私の頭の中は、現地の人たちとの交流はもちろんですが、くるみさんから教えていただいことでいっぱいです。 印象的だったことは、メタハラの中学校に届いていたたくさんのパソコン(注:海外から寄付された中古のパソコン。修理・メンテナンスが必要。技術者や修理費用が手当できずそのままになっている)を見て、私が「援助って難しいです」と言ったとき、「自分だったら、どういうことをしてもらったら嬉しいか、考えてみたらいいのよ。実は単純なことなのよ。」と言ってくださり、とても大事なことに気づかされました。今まで、たぶんすごく難しく考えていたので、くるみさんの一言で、すごくすっきりというか、自分の中でクリアーなものになったような気がしています。 また、「協力隊員はハートが大切」といってくださり、自分に自信がまったくない私にとってはこの上ない励みの言葉となりました。現地でやっていけるだけの能力はまだまだ全然足りませんが、憧れで終わることがないよう、実現できるように、たくさんの経験をつみ、たくさんの人と出会い、勉強していきたいと思います。

●同ゼミ 澤出 梨江さん

先日の訪問では、くるみさんには、何日もご同行していただき、とても多くのお話をお聞き致しました。くるみさんが、イギリスにいらしたときに、韓国の方との歴史認識の違いや、日本人の歴史認識の甘さ、稚拙さなどをお話しておりましたが、私も同様の経験を今夏の中国瀋陽市(旧奉天です)へ語学留学した際に感じたことを思いました。私たちのような若者は、もっと深く意識すべき点だと思います。

また、“Do different!“のお話は、ともすれば大学という組織の中で画一的になってしまう私にも、とくに心に響くものでした。今回のアフリカ行きにも戸惑いがあった中で「このような心持ちでよいのだろうか…」と思っておりましたが、「『オロオロすること』が大切。『オロオロしながら何かを考える』ことで、自分なりの方法を考えることができて、それが独自性にもつながるんですよ。」とお言葉をかけていただいたことで、今回のフィールドワークを含め、これからの勉強への意欲を、今とは異なった角度で改めて持つことが
できました。ありがとうございました。

清志さんとは、農業試験場とその後の昼食のレストランにてのみ、おもにお話することしかできませんでした。しかし、その中でも冷静にお答えいただきました。幼いころの先生との思い出は今でも心に残っている、娘さんの先生が理解のある先生だった、松本さんとご一緒にお話されていた、最近の先生はちょっと抑圧が強すぎるんじゃないか(お言葉は少し違いますが)という実感のこもったお言葉は、私たちに迫るものでした。エチオピアの子どもたちと日本の子どもたちとの相違点をお聞きしたときも、すぐにお話なさるのではなく、「どこだと思いますか?どこか違いがあると思いますか?」と、反対に投げかけられたとき、私たちがお聞きしようとしていたことは、やはり日本からのステレオタイプによるものだったのではないかと、その後のエチオピアでの滞在中に何度も思い直すことになる、スタートだったと思います。また、「日本の子どもたちに、今回の経験や見たものを持って帰って、『どんな違いがあると思う?』って投げかけても面白いんじゃない?」とおっしゃったときには、現地にいて、感じるからこそのお答えだとなるほど!と思いました。

お二人からお話を聞いて、私たちは教師になったとしても「子どもたちに教えることよりも、教えられることの方が多いのだ」と深く深く思いました。それは、今回出会ったカラユの子どもたち「からも教わり」ました。

●同ゼミ 齊藤 綾乃さん

「アフリカの現実を伝える際に必要なこと」に対する返答は私の想像していたものとは違い(私は返答の一つとして、マイナス面とプラス面を偏ることなく伝えること、などを想像していました)やはり現地で活動されている方の大きな考えだなと思いました。子どもたちにエチオピアについて話す機会があれば、私はエチオピアンホスピタリティにも触れ、笑顔あふれる毎日だったとエチオピアの素晴らしい面ばかり伝えることになると思います。

文献で読んだことではなく、私の心温まる経験をその温度のまま子どもたちに伝えることができたなら子どもたちの心にもきっと届くだろうと思っています。答えにくい質問・疑問にも快く答えていただき本当にありがとうございました。今回のツアーで学んだことを今後に生かし更なる向上に努めていきたいです。

●同ゼミ 北嶋佳衣奈さん

私事ですが、実は、年をまたいでアルバイトをしていました。(「また、お金を貯めて、アフリカに行くんだ!!」という、気力だけで働いてきました。)

私にとってエチオピアは遠い遠い国でした。アフリカについての本を読み(ちょっとですが…)友達と議論をしても(ちょっとですが…)やはり、リアリティを感じられないという気持ちが心のどこかにありました。しかし、今スタディツアーを終え、エチオピアと言われて思い浮かぶことは、ロバさんだったり、ゲタチューだったり、お世話になったエチオピアの人々の顔です。まさに、これが「世界平和」の一歩ですよね。そして、顔が見えるようになって、エチオピアの文化(ポジティブな面もネガティブな面も)が、前よりも大きなインパクトを持って、私の中に入ってくるようになりました。

私は、私の中でエチオピアを発見しました!(まだ発見したばかりの状態ですが…)
もっともっと知りたくなりました。しかし、同時に、GTFの活動はエチオピアの中でも成功している部類に入るものだ、ということを、忘れてはいけないと思いました。一面だけを見て、全てを理解した気にならないように気をつけたいです。

また、インタビュー・質問の仕方についても、反省が満載でした。カラユの中学生に「日本の文化について教えてよ!」と言われた時、その質問が漠然としていて、言葉に詰まってしました。私も、そのような質問(抽象的で、的を絞っていない質問)を相手にしていたのだと、その時気づきました。「相手の立場に立って考えること」が、異文化理解の一歩と言っておきながら…自分が情けなくなりました。白鳥さんの、関心の入り口として、エチオピアの素敵な部分を提示して、そこから問題点を挙げていく・課題の入り口へと導く(楽)→(苦)という教材開発の視点、是非参考にしたいです。






●江別市立大麻中学校教諭 佐藤 貢さん

エチオピアでは毎日が濃い体験の連続でありました。この熱が上がっているうちに現地であったことをまとめようと考えています。そして、それと同時にクールダウンをしながら、自分にできることを冷静に見つめたいと思っています。

アジスアベバは予想以上に大きな町でした。熱気、排気ガス、圧倒される感じです。くるみさんに教えて頂いた「to mo ka」にも行きました。とてもおいしいマキアートを飲んできました。レジで並んでいるとアジスアベバの紳士に声をかけられました。日本から来たと伝えると、
「私は日本にはとても良い印象をもっている。」
「エチオピアは楽しめたか。」
「何が印象に残っているか。」と尋ねられ、
「大きな空に広がる星が印象的でした。」と答えました。
すると、にっこりと微笑んで、
「君はどこに行ってきた。」と尋ねます。
「メタハラ」「アダマ」などですと答えると
「そうだ。郊外の小さな町に行くと、本当にそうなんだよ。」
「でもアジスアベバの空気はブラウンだろう。」と握手を求められ、そして
「気をつけて帰ってくれ。」と、また微笑まれました。

しっかりとした教材はまだできていませんが、一度1年生(158名)にエチオピアでの話をさせてもらいました。

星空の話、スピリッツジュース(ナショナルミュージアムの横にあるカフェで飲めるマンゴー、グアバ、アボガド、パパイヤの果肉一杯のジュース)、インジェラ、授業風景などの話を写真を交えながら話しました。子どもたちのリアクションはこの辺りが良かったように思えます。また、伝統的な枕の現物やコーヒーセレモニーの話も面白そうに聞いてくれました。

また、集会の導入のところでちよっとしたクイズをしました。
@1日1リットルしか水が使えないとしたら、どうするか (飲食、洗い物、シャワー、その他の四択)
A1日あたりの水使用量(イギリス、ドイツ、アメリカ、日本の四択) その内訳の説明
C写真(アフリカの大地)がどこの写真であるか
Dエチオピアの位置
Eエチオピアの国旗 (今年度いらしたJICA研修員の国を選択肢にいれました)

Cの写真とからめ、干ばつのことにふれました。グーグルアースの写真を見せながら、プランテーションと遊牧民(カラユの人々)の生活ということにも少しふれました。「みんなはどう思うかな。お金は大切かもしれない。でもそのかげで苦しんでいる人もいる。そして温暖化などの環境破壊にもつながっているというんだ。」この問いには、みんな静かになりました。あまりつっこみませんでした。

授業後に各担任の先生方が生徒に感想を聞いてくれました。水に関することが多く出ていたようです。

白鳥さんご夫妻には本当にお世話になったと改めて感じます。とにかくお話が明快で、話題性が豊かなことに、感心と言うよりは驚きを感じました。豊かな経験はもちろんのことでしょうが、人生を、今していることを楽しんでいるように見えるお姿に何かこれからの人生を歩む上でのヒントをいただいたようにも思えます。お話しの中にはとてもセンシティブでネガティブな側面もありました。社会の構造がもたらす、一筋縄ではいかない現実。しかし、白鳥さんのお姿からうける印象は暗さとか、苦痛という側面を払いのけるような自然体の力強さを感じました。エチオピアの一部の地域を短い時間ではありますが、深く見ることができたこと、そして白鳥さんご夫妻、中田隊員、GTFスタッフなど、多くの生きる力にあふれた人たちに出会えたことがひょっとすると最も大きな収穫だったかもしれません。

●同志社中学校教諭 織田雪江さん

ファンターレの乾燥と砂埃の現地に立ってみると、エチオピアの中でもさらに周辺化されたカラユの人たちが、どんな困難に向き合ってくらしを送っているのか、いくらかでも感じることができました。そして、気候や経済状況などの変化といったことが、カラユの人には命に関わる問題だということに気づきました。世界じゅうの人々が目に見えないところでつながって、私たちと同じ影響をもっと直接的に受けていたり、自分たちのくらしが見えないところで人に影響を与え、命を脅かしたりしているのだということを、もう少し意識しなければと感じた旅でもありました。

インタビューした高校生の女の子が、自分たちの文化をデンジャラスカルチャーと言っていたことが印象に残りました。カラユ牧畜民の文化や慣習は、女性にとって特に厳しいものです。自分のまわりにいる人たちが当たり前だと思っていることを変えていくのは、大変な勇気とエネルギーのいることでしょう。しかし、進学することで、彼女たちは身をもってそのことに立ち向かっているし、それを支えるGTFスタッフやアフリカ理解プロジェクトなど、それぞれの場所で、それぞれの地域をより良くしようと活動している人がいるということに勇気づけられました。

GTFのスタッフはどの人も、あったか〜い、親切な人たちばかりでした。今回、白鳥さんご夫妻の話の端々から、職場に戻っても生かせるたくさんの教訓?を得ることもできました。現状はどんどん変化していきますから、困難なことにぶつかった時に自分で工夫しながら乗り越えていく人を育てたいとか、様々な関係性をお互いに尊重しながら築いていくとか、連携というのはどういうことを表すのか、などなど、、、。白鳥さんやGTFスタッフのおかげで、たくさんの学びのある充実した旅となりました。ありがとうございました!!



●JICA札幌 渋谷  将さん

あれからもう1ヶ月が経ちましたが、広大なエチオピアの大地、そしてお世話になった方々のことが、つい昨日のことのように思い出されます。

今回の訪問でもっとも印象的だったことは、やはり授業の視察です。エチオピアはもちろんアフリカが初めての私は、実際に五感を目一杯使って感じることをどの場面でも心がけましたが、やはり、自分の仕事に関心があったのでしょうか、授業の流れや組み立て、どんな教育技術が使われているか等、関心を持って見させていただきました。短時間ではありましたが、授業を参観すると同時に、自分の仕事を客観的に分析している自分がいることにも気づかされました。

私は現在出向中なので、すぐに授業ができる現場がありません。しかし、JICA札幌で実施している開発教育に係る事業でまず活かすつもりです。3月中旬には高校生を対象にした開発教育ワークショップを高校の先生方と連携して行います。何かの形で活かせないものかと思案中です。

授業参観、家庭訪問、子どもたちとの交流...どれをとっても帰国後の今でも考えさせられます。この貴重な体験を教材化し、4月以降の復職後に実践つもりでいます。できた教材及び授業の様子、子どもたちの変容などにつきましては、改めてお知らせします。





アフリカ理解プロジェクト 白鳥くるみ

学生のみなさんが、日に日にたくましくなっていく姿を間近に見ることができるのは、このスタディツアーを受け入れる側の大きな喜びです。大津ゼミのみなさんの「みんなの学校」訪問は、昨年に引き続き2回目、大津教授は3回目の訪問で、毎回いただく報告書を楽しみにしています。

このスタディツアーのように、現地で働く協力隊員や現地教師の授業を、日本の開発教育に関心のある教師・学生が参観し、意見交換やフィードバックをすることは、双方にとって有効な交流ツールになると思っています。

具体的な活動でいうと、協力隊員(数学)の授業を参加者が参観。授業内容について質疑応答ののち、授業内容の良かった点、改善点(女子生徒へ配慮の必要性)の指摘がありました。協力隊員からは、生徒へのインタビュー内容ややり方に、工夫が必要というコメントが寄せられました。協力現場での教育の質を高めるために何が必要か、また日本の教育現場で何を伝えていくか、双方にとって多くの学びと気づきがありました。


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