『みんなの学校』のカラユ牧畜民の生徒を対象に、アフリカ理解が後援して「詩とエッセイコンテスト」を催しました。中学生(12−16歳)と高校生(17歳ー20歳)に、書くことを通じて、自分たちの地域社会や国の将来について考えてもらおう、子どもたちの読み書きの力を伸ばそうという、学校が始まって以来、また郡内でも初の試みです。
20065月に委員会を結成し、10月に学校で応募が開始されました。集まった詩やエッセイは、委員会がつくった評価表をもとに厳正に行なわれ、2007年1月19日にその授賞式と発表会が催されました。
みんなの学校(小学校)前にコンテストの幕が
牛などの家畜飼育を正業とし、移動しながら生活する人たちのことを牧畜民(パストラリスト)と呼びます。エチオピアの全人口のおよそ11%がこの牧畜民で、国の中央部から東部で暮らしています。カラユの人々は、こうした伝統的な暮らしを守り続けているパストラリストで、コミュニティ内の問題を住民の合意で解決する「GADA」という仕組みが、人々の間ではまだ生きています。男女や年齢で社会的な役割が決まっていて、女性は家の建築と保守管理、調理、家畜のえさ集め、薪集め、水汲み、子どもの世話、市場での農畜産物の売買などが仕事。男性は、放牧している家畜の世話、争いごとの解決、伝統的な儀式などを行ないます。
一夫多妻が一般的で、家族は3世代に兄弟も加わった大家族で暮らしています。土地はすべてカラユ社会の共有地で、個人的な土地の売買はできません。助け合い、そして共有することに大きな価値を置き、共同体としての結束が強いカラユ社会の内部変化は、非常にゆっくりとしたものです。
資源の少ない乾燥地での食料と収入の確保は困難で、こうした低収入に加えて伝統的な価値観から、若い人たちの考えがコミュニティに反映されることは少なく、また女性が教育を受ける機会は、大変限られたものになっています。こうしたカラユ社会のなかでの、今回のエッセイコンテストや「あなたの国や地域を繁栄させるために、どんなことができますか?」というテーマは、大変刺激的なものだったと思います。
カラユの長老は、式の冒頭で「人が競うというコンテストというものはカラユコミュニティでは初めてだし、若い人たちの話を聞くという機会も確かに少ない。今日は子どもたちの話を聞き、学校での教育の成果を知るよい機会だ」と語っていました。
初めての「詩とエッセイコンテスト」どんな発表&授賞式になるかと楽しみに出席しました。会場に着いたときには、小学校のホールにはすでに生徒や両親、カラユの長老たちでいっぱい。GTFのスタッフの司会で、コンテストの趣旨やアフリカ理解の紹介があり、女子学生の「歓迎の歌」、小学校の女の子たちは「伝統と教育」をテーマにしたロールプレーを披露してくれました。小さな小学生たちは、この日のために何度も練習を重ねたのでしょう。大勢の観客の前で、臆することも、間違うこともなく、堂々とした態度でパフォーマンスし、さかんな拍手を受けていました。
ロールプレーをする小学生
長老たちも出席
選ばれた6人のテーマは、「見合い結婚」、「他民族との問題解決の方法」、「女性に対する慣習」など、カラユの伝統的な暮らしへの賞賛や疑問をなげかける内容で、どの生徒たちも堂々と印象に残るスピーチをしてくれました。(スピーチはオロミヤ語行なわれたので、英語に翻訳したものを日本語に訳し、後ほど掲載します)。
エッセイを朗読する中学生
6人の候補者のスピーチや朗読のあと、長老、PTA代表、GTFのスタッフなどで構成されている運営委員会の審査が、公正を期すために壇上で行なわれました。審査基準は、あらかじめ委員会で話し合われ、エッセイ募集期間に生徒にも伝えられています。テーマと内容が一致しているか、メッセージは明確に伝えられているか、ことばの選び方や使い方が間違っていないかなど、5つの項目で選考が行なわれました。選考に時間がかかっていたので、受賞者を3人に絞るのはとても難しかったようです。
女性や子どもたちも大勢出席
いよいよ3人の受賞者が発表されるということで、会場の熱気はピークに。モチベーションを最初から賞品に置きたくないというGTFの配慮で、賞品がどんなものか、実は最後まで生徒には知らされていませんでした。賞品はノートか鉛筆と思っていた受賞者は(会場の出席者も)、自転車、ラジオカセット、カメラ(GTFに通学や勉に必要なものを選んでもらいました)に目を丸くし、嬉しさを隠せない様子でした。
一位のIlaas Dhaayee君のエッセイ
一位は自転車
式の後、プロジェクトの副代表の白鳥清志さんから、アフリカ理解プロジェクトがアフリカで活動していた元協力隊員たちが「アフリカのために役立ちたい」という想いで活動を始めたこと、アフリカは遠く文化的な違いも大きいと思いがちだが、実は日本の社会と共通する部分が多く、「アフリカのことを考えることは、日本の社会を考えること」でもある。若者たちの書いた今回のエッセイは、カラユ、日本人にとってそのための手がかりとなるだろう、というスピーチに(おそらく日本人を見るのも初めての会場の人たち)、大きくうなずく顔が見られました。
受賞者、運営委員会のメンバーと
続いてスピーチのあったオロミヤ州教育局の職員も、今回のようなコンテストは自身も初めての経験だが、教育の質を高めるとてもよいプログラムだ。ぜひこの催しを郡内の小中学校全校に広げられるよう、教育局に提案していきたいと話していました。
昼食をまじえてのGTFとの反省会では、初回ということもあるがエッセイの応募が少なかったこと、プログラムにもう少し工夫が必要であることなどがあげられ、この反省を次回へ生かしていくことを確認しました。
JICA専門家の大泉さんが、授賞式に一緒に行き、感想を書いてくれました。
エッセイコンテストに参加して JICA 大泉暢章
アフリカ理解プロジェクトがGTFと協働で支援するファンターレ郡のDandi Dundina小学校で行われたエッセイコンテストに出席してきました。
発表者は個性豊かな民族衣装に身を包み、カラユの文化を紹介する生徒や詩を詠む生徒もいて、カラユ文化の奥深さを感じさせる発表でした。
なかでも私が感銘を受けたのは、長老の話を題材に最近のカラユ社会を取り巻く状況と昔を比較し、カラユの人々にとって最近の変化は必ずしも良いものだけではなく、カラユの伝統を見直すことが重要性だと説いたものでした。
何年後になるかわかりませんが、カラユに対する支援の延長線上に日本のような先進国の未来が待っているのでしょうか。現在日本で頻発している家族が家族を殺害するような凄惨な事件を聞くと、確かに彼の変化に対する憂いもわかりますし、現在の日本よりもカラユの方が貧しくとも健全であるといえるでしょう。
今回のエッセイコンテストで、多くの問題を抱えている先進国が途上国に何かを教えるというということではなく、共に考える姿勢が大切だと改めて感じさせられました。その結果アフリカ的発展、もっと言えばカラユ的発展を達成できれば良いと思いました。また、日本を自分なりに見直す良い機会にもなりました。カラユの皆さんありがとうございました!
S U P P O R T
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